かつて「40歳で1,000万円の貯蓄」を理想とした1985年生まれ世代。しかし現実は、キャリアの方向性を見失い、経済的不安を抱える人が多数派となっています。人生100年時代を迎え、働く意欲は高いものの、理想と現実のギャップに悩む40歳の等身大の姿に迫ります。
20年前「理想の貯蓄額は1,000万円」だったが…今年40歳の1985年生まれが直面する「残酷すぎる実態」 (※写真はイメージです/PIXTA)

働き続けたいのに6割超が「キャリア迷子」の40歳

人生100年時代といわれる現代において、40歳という節目はかつてとは異なり、キャリアの中間地点というよりは、むしろ新たなスタートラインとしての色合いが濃くなっています。こうしたなか、今年40歳を迎える1985年生まれの人々は、自身のキャリアと人生をどのように捉えているのでしょうか。

 

ヒューマンホールディングスが企業や組織に勤務する1985年生まれの男女1000名を対象に実施した『40歳のキャリア実態と「なりたい自分」意識調査2025』からは、意欲と不安が交錯する現代の40歳のリアルな姿が浮かび上がってきます。

 

まず注目すべきは、その就労意欲の高さ。「何歳まで働きたいか」という問いに対し、最も多かった回答は「61歳~65歳」(24.3%)でした。これは、多くの企業で定年と定められる年齢であり、その後も再雇用や継続雇用といった形で働き続けることを視野に入れている層が厚いことを示しています。さらに、「動けるうちはずっと」(23.6%)という回答がほぼ同数で続いている点も見逃せません。健康上の問題がなければ年齢に捉われず働き続けたいという強い意志が、現代の40歳の多数派を形成していることがわかります。

 

この背景には、単なる生きがいや社会との繋がりを求める意識だけでなく、後述する経済的な事情も大きく影響していると考えられます。いずれにせよ、彼らがこれからのキャリアを長期的なスパンで捉えていることは間違いありません。

 

しかし、その高い就労意欲とは裏腹に、多くの人がキャリアの方向性を見失っているという実態も明らかになりました。「今後のキャリアの方向性がわかっているか」という質問に対し、「方向性がわからない」(19.5%)と「どちらかといえば方向性がわからない」(45.9%)を合計すると、実に65.4%もの人々が、自らのキャリアの行く先に迷いを抱えていました。働き続けたいという明確な意志がありながら、そのための具体的な道筋を描けていない――今の40歳の前には「大きな壁」が存在しています。

 

なぜ、これほど多くの「キャリア迷子」が生まれているのでしょうか。1つの要因として、働き方の価値観が大きく変化し、選択肢が爆発的に増えたことが挙げられます。かつてのような終身雇用を前提とした単線的なキャリアモデルは崩壊し、転職や副業、独立、学び直し(リスキリング)など、無数の選択肢が目の前に広がっています。選択肢の多様化は自由度を高める一方で、「どれを選ぶべきか」「自分にとっての正解は何か」という根源的な問いを個人に突き付け、かえって身動きが取れなくなる状況を生み出していると推察されます。

 

この状況は、「なりたい自分の姿を思い描けているか」という設問の結果とも連動しています。「思い描けている」と回答した層(計46.8%)は、キャリアの方向性も明確である傾向が見られました。これは、キャリアプランという戦術を立てる以前に、「どのような人生を送りたいか」という戦略、すなわち自己の価値観やビジョンを確立することの重要性を示唆しています。自分自身の軸が定まらなければ、多様な選択肢の海で行く先を見失うのも無理はないでしょう。