(※写真はイメージです/PIXTA)

後期高齢者医療制度を構成するのは病気になるリスクの高い75歳以上の高齢者です。保険としては還元率が低いにもかかわらず、後期高齢者分として保険が切り分けられたことには、財政界の思惑が関わっているのではないかと医学博士の原口兼明氏は指摘します。本記事では、医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長である原口氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より部を抜粋・再編集し、後期高齢者医療制度が導入されたあとの財政状況の変化について詳しく解説します。

後期高齢者医療制度のしくみの特徴

保険という社会保障制度は本来、ある人が1人では対処しきれないリスクに見舞われたときにそなえて、大勢の人でお金を出し合い、支える仕組みです。例えば、1口1000円のがん保険があったとしましょう。

 

この場合、がんリスクの高い人1人を、がんリスクの低い人999人が支えることで初めて、がん保険は成り立ちます。万が一がんリスクの高い人が発症しても、残り999人ががんを発症しなければ、がんになった人は1000×1000=100万円を受け取れるのです。

 

ところが、後期高齢者医療制度はその形になっていません。なんらかの病気を発症するリスクの高い75歳以上の人たちだけを集めて、医療保険を構成しているのです。先ほどの1口1000円のがん保険でいえば、がんリスクの高い人ばかり集めて保険を作っているようなものです。そして1000人のうち500人が発症すれば、発症した人はわずか2000円しか受け取れません。もしも、こんながん保険があったとしたら、誰も加入したいとは思わないでしょう。

 

わが国の後期高齢者医療制度も、仕組みとしてはまったく同じです。ただ、先ほどのがん保険の例と異なるのは、国や他の保険者(組合健保、協会けんぽ、国民健康保険)からの金銭的なサポートがあるということです。

 

とはいえ、それで十分な保障が得られるかというと、そうとは限りません。この後期高齢者医療制度では、保険者本人が負担する保険料は全体の医療給付費の10%とあらかじめ決められているからです。つまり、この制度で高齢者に給付される金額は、「高齢者自身が負担できる保険料額の10倍まで」と上限が決められているのです。

 

給付金を増やしたければ、自ら支払う保険料を増やすしかありません。逆に、保険料を低く抑えたければ、支払われる給付金が少なくなることを覚悟しなければなりません。

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

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