(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●イスラエルのイラン空爆を受け、原油、金、米ドル、産油国通貨が上昇し、主要株価指数は下落。
●イスラエルはイランが米国との協議においてウラン濃縮活動の完全放棄に応じないと判断した模様。
●両国とも長期化は望まないと思われ米国の仲裁で早期に停戦合意なら市場への影響は一時的。

イスラエルのイラン空爆を受け、原油、金、米ドル、産油国通貨が上昇し、主要株価指数は下落

イスラエルは6月13日からイラン各地の核関連施設や軍事施設などへの大規模な空爆を開始し、イランもイスラエルへの報復として弾道ミサイルで同国領土を攻撃しました。15日にはイスラエルが攻撃対象をインフラ施設にも広げ、イランの燃料関連施設などを狙った空爆を実施、イランも多数の弾道ミサイルなどの発射を続けており、両国の交戦は激化しています。

 

イスラエルによるイラン攻撃の報道を受け、6月13日の金融市場ではWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格が急騰し、主要株価指数は日米欧を中心に軒並み下落する動きがみられました。原油高によるインフレ懸念の強まりから、米国や欧州では長期金利の上昇が目立ち、為替市場では米ドルやノルウェークローネなど産油国通貨が対主要通貨で買われたほか、金先物価格も上昇し、4月につけた過去最高値に迫りました。

イスラエルはイランが米国との協議においてウラン濃縮活動の完全放棄に応じないと判断した模様

イスラエルとイランは過去、良好な関係にありましたが、イランでは1979年のイラン革命により親米のパーレビ王政が倒され、宗教を厳格に解釈したイスラム教シーア派による宗教指導体制が樹立されました(図表1)。新たな体制のもと、イランはイスラエルを「聖地エルサレムを奪った敵」と位置付けて国交を断絶、現在も反イスラエルを国是に掲げています。

 

出所:各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]イスラエルとイランの対立経緯と親イラン勢力 出所:各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

最近の動きをみると、イスラエルは2023年10月にパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスと衝突して以降、ハマスを支援するイランへの攻撃を強めてきました(図表2)。2024年4月にはイスラエルとイランが史上初めて直接交戦し、同年10月に再び衝突しました。イランは米国との核協議を2025年4月から続けてきましたが、イスラエルはイランがウラン濃縮活動の完全放棄には応じないと判断し、今回の攻撃に踏み切ったと推測されます。

 

出所:
[図表2]最近のイスラエルとイランの主な軍事衝突 出所:各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

両国とも長期化は望まないと思われ米国の仲裁で早期に停戦合意なら市場への影響は一時的

現時点でイスラエルとイランの交戦は続いている模様であり、また、米国とイランの核協議について、仲介役のオマーンは6月14日、15日に予定されていた6回目の協議は中止になったと発表しました。一方、トランプ米大統領は6月15日、自身のSNSで「イスラエルとイランの間にまもなく平和をもたらすだろう」と投稿し、米国が停戦に向けて関与する可能性を示唆しました。

 

米国の仲裁で両国が早期に停戦で合意すれば、市場への影響は一時的と思われます。イスラエルのネタニヤフ政権は盤石ではなく、主な親イラン勢力(レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど)は弱体化しており、イスラエルもイランも交戦の長期化は望まないと考えられます。イランによるホルムズ海峡の封鎖はリスクですが、イランの原油収入にも影響が及ぶため、市場では現実化の恐れは小さいとの指摘も多くみられます。

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『イスラエルとイランの軍事衝突が金融市場に与える影響について【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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