クリニックの開業にはいくら必要?…独立前に知っておきたい「開業資金」のこと【医療コンサルタントが解説】

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クリニックの開業にはいくら必要?…独立前に知っておきたい「開業資金」のこと【医療コンサルタントが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

医師としてのキャリアプランを考えるうえで、「いずれは開業したい」という考えの人も少なくないでしょう。そこで把握しておきたいのが、自分の専門科目のクリニックにかかる開業費用です。診療科目によって必要な開業資金が異なるため、「こんなにお金がかかるとは思わなかった」とならないよう、科目別に必要な開業資金の目安を把握しておきましょう。株式会社船井総合研究所の伊佐常紀氏が、具体的なデータを交えて解説します。

クリニックを開業するために必要な金額は?

医療コンサルティング業に従事する筆者は、開業を検討している勤務医の方々から「クリニックの開業にかかる費用」についての相談を多く受けます。

 

というのも、開業に必要な資金に関する公的なデータが少ないため、開業準備を進めるうえでのハードルとなっているのです。

 

そこで今回は、開業医が多い科目開業費用が高い科目開業費用が安い科目の3科目を例に挙げ、それぞれの特徴を比較することで、クリニック開業に必要な費用について具体的に解説していきます。

クリニックの開業費用は「診療科目」ごとに異なる

■開業費用が高い科目

クリニックの開業費用は、診療科目によって異なります。また、特化する医療サービス(手術の有無や自費診療の導入)や売上目標によって、必要な建物の規模、医療機器・検査機器等の設備、人員などが異なるため、同じ診療科目でも開業費用が大きく異なることも少なくありません。

 

一般的に開業費用が高いのは、高度な医療機器を必要とする科目や、手術室などの大規模な設備が必要となる科目です。たとえば眼科は、高額な医療機器を導入する必要があるため、開業費用が高くなる傾向があります。

 

また整形外科も、リハビリテーション設備などが必要となり、一般的に他の科目と比べて床面積が大きくなることから、その分費用がかかります。

 

さらに近年、骨粗しょう症患者の増加により骨密度検査のためのDEXAを導入するクリニックが増えているほか、MRI・CTなどの高額な画像診断装置を他院との差別化として導入するクリニックも少なくありません。これらの費用が加算され、整形外科は開業費用が高い科目のひとつとして考えられています。

 

■開業費用が安い科目

一方、開業費用が安いのは、比較的シンプルな設備で診療可能な科目です。たとえば、心療内科皮膚科などは高額な医療機器を必要としないため、開業費用を抑えられます。

 

特に心療内科は、床面積や人員がコンパクトで、かつ高度な医療機器を必要としないため、開業費用がもっとも低い科目のひとつといえます。

 

一方、皮膚科のなかでも自由診療(シミ治療、しわ・たるみ治療)を付加した美容皮膚科の場合は、1台当たり1,000万円~1,250万円の脱毛器やフェイシャル治療器といった医療機器を複数台購入する必要があり、比較的な高額の設備投資が必要となります。

 

■開業医が多い科目

開業医がもっとも多い科目は内科です(※1)。開業費用が抑えられて患者数も多い傾向にあるため、開業の障壁が低く、開業医が多くなっていると考えられます。

※1 厚生労働省保険局調査課「令和5年度 医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況」令和6年(2024年)12月

クリニック開業に必要な費用の内訳

ここまで、「開業費用が高い科目」として整形外科、「開業費用が安い科目」として心療内科、「開業医が多い科目」として内科を挙げてきました。そこで、以下ではそれぞれの開業費用を比較していきます。

 

クリニックを開業するにあたって、必要な費用の内訳とそれぞれにかかる金額は次のとおりです。

 

〈クリニック開業に必要な費用〉

1.物件取得費……土地や建物を購入する場合の費用

2.内装工事費……診療室や待合室などの内装工事費用

3.医療機器費……診療に必要な医療機器の購入費用

4.什器備品費……診察台や椅子、デスクなどの備品購入費用

5.開業準備費……開業届や許認可申請などの費用

6.広告宣伝費……ホームページ制作や看板設置などの費用

7.運転資金……開業後の運転資金 (人件費、家賃、光熱費など)


 

※株式会社船井総合研究所が作成
[図表]3科目における開業費用の比較 ※株式会社船井総合研究所が作成

 

■内科…5,400万円~9,000万円

内科は、先述のように開業医が多い科目であり、比較的開業しやすいという特徴があります。患者数が多く、必要な医療機器が他の科目に比べて少ないことに加えて、開業費用を比較的安く抑えられることなどがその背景でしょう。

 

ただし、開業医が多い分、競争が激化している側面もあるため、開業の際には地域特性や競合状況をしっかりと分析し、差別化を図ることが重要です。

 

また、内視鏡に特化する場合は、胃カメラ・大腸カメラ等の高額な医療機器が必要なため、1億2,000万円程度になるケースもあります。

 

■整形外科…8,200万円~1億5,200万円

整形外科は比較的高額な開業費用が必要となる科目です。リハビリテーション室の規模、DEXA、MRI、CTといった画像診断装置の設置などで、それぞれ数千万円から数億円の費用がかかります。加えて、手術室を設ける場合は、手術台や顕微鏡などの設備、滅菌装置などが必要となります。

 

一方、整形外科は超高齢社会の進展にともない需要が高まっている科目です。「地域医療構想」により、地域貢献という観点からも開業医としてのやりがいが大きく、さらに高収入も見込めます。

 

ただし、運動器リハビリなどの医療サービスにより1ヵ月あたりの「のべ患者数」も多いことから、受付理学療法士・作業療法士といった人員を多数必要とします。そのため、人件費等の運転資金が増えることも念頭に置いておく必要があるでしょう。

 

■心療内科…1,900万円~4,300万円

心療内科は開業費用が比較的安い科目です。高額な医療機器を必要とせず、診察室と待合室があれば開業できる場合もあるため、初期費用を抑えることができます。

 

ただし、心療内科は他の診療科目よりも診療報酬が低い傾向があります。そのため、綿密な経営計画を練っておくことが重要です。

経営者としての「準備」も欠かせない

クリニックを開くにあたり、開業資金の準備はもちろん重要です。しかし、開業医として成功するためには医療法の遵守や人員確保のための求心力、中長期的な経営計画の立案やスタッフマネジメントなど“経営者としての準備”が欠かせません。特にクリニックを開いたあと、スタッフマネジメントに悩む開業医が多いです。

 

離職による人員不足、スタッフのモチベーション低下による医療サービスの質の低下など、せっかく開業したのに医療に集中できない、十分な医療サービスが提供できないといった状態に陥る話をよく聞きます。

 

こうした事態を防ぐためにも、アウトソーシングを上手く利用して、経営計画に組み込むことが必要でしょう。

 

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著者:伊佐常紀(いさ・つねのり)

株式会社船井総合研究所 医療支援部整形外科グループ

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